第12回 勝福寺ザ・スパーライヴ・シリーズ
Shofuku-ji The superlive Series vol.12

中村健吾カルテット

『Songs in My Life Time』(2012年10月3日リリース) 発売記念全国TOUR at 総社・勝福寺

2012年10月28日(日)17時開演


ライヴレポート

境内の紅葉が彩りを深める晩秋の10月28日(日)、第12回勝福寺ライヴを開催しました。今回のゲストは10年ぶり3度目のご来山となるジャズベーシスト、中村健吾さん、ソプラノサックス / テナーサックス奏者の川嶋哲郎さん、ドラムの海野俊輔さん、ピアノの菊池太光さん。本来はソプラノサックス・アルトサックス奏者にステイシーディラードをお迎えする予定でしたが諸事情で来日が遅れ、ピンチヒッターとして川嶋哲郎さんに務めて頂けることとなりました。ご来山の皆様にはご迷惑をお掛けしてしまい申し訳ありません。川嶋さんの演奏はいかがでしたでしょうか。Gikooh個人的期には、川嶋さんの演奏に惹かれ、いっぺんにファンになりました。この音色が生まれる人生の背景に深いドラマがあるのだろうと拝察しております。
勝福寺のライヴシリーズは、毎回そのテーマの本質に拘ってご提供させて頂くことに努めております。それはGikooh自身が幼少から感じ続けてきた、演奏家によって心に伝わる音楽と伝わらない音楽の差は何なのか、自分なりの答えが見つかったのは大学時代ですが、胸に秘めた想いを具現化させたのが勝福寺ライヴです。
中村健吾さんは第1回目の記念すべきライヴでお世話になって以来11年のお付き合いになります。ニューヨークで長年鍛えられた抜群の演奏力と表現力、琴線に届く作曲力、暖かで堅実な人柄にはいつも感化されます。その他のメンバーの方々とは初対面でしたが、健吾さんとご一緒されるということは、既に高いレベルでの演奏が出来ることを物語っているので寸分の心配はなく、むしろ期待で胸が高鳴りました。
ところで、勝福寺には寄贈されたヤマハのグランドピアノ「S6」という名器があります。胴体の側面にヤマハのロゴが真鍮で彫り込まれたこのピアノは希少品で、2001年に導入しました。
ドラムは外部からその都度持ち込んでいました。しかし、毎回異なるサウンドを聴きながら「勝福寺の音空間」を極めたいと思い、S6と相性の良いドラムセットを多数メーカーから模索しました。そして、「カノウプス」のClub Kitというモデルが唯一との結論に達しました。拘りといえばそれまでですが、物を喋らない楽器の気持ちを理解することは大切な務めだと思っています。勿論、S6だからClub Kitということではなく、勝福寺客殿の反響等を総括的に考えての選択です。

メイン会場

メイン会場

10月28日(日)午後12時半、健吾さんご一行が到着され、まずこの独特な雰囲気に興味津々のご様子。今までは東向きの舞台でしたが今回から南向きに変え、机を並べるなど会場の形態を一新させました。こうすることにより客席は横長になり、どの席からでも演奏家との距離がより身近になりました。ところが舞台が変わると音のバランスも変わるようで、多少気になる部分もあったので、良くなるように改善に努めたいと思います。

そしてサウンドチェックが始まりました。健吾さんのベースはさすがといった感じで深みがあります。ピアノの菊池さんは、後からも書きますが相当上手いです。サックスの川嶋さんは、物凄く大人の雰囲気です。ドラムの海野さんは、繊細で音のキレも良く、Club Kitを見事に操られていました。まさしくGikooh好みのドラマーです。海野さんに初叩きをして頂いたことは光栄でした。サウンドチェックがひと段落したところで、本堂にてご法楽。全員で般若心経一巻を唱和し、Liveの無事とメンバーのご健康を祈念しました。そして、昼食Time。家内手作りのライスカレーを食べました。共に食事をすることで、初対面であっても心が通じ合うから不思議です。その後ご一行は本番まで宿舎へ。会場では本番までの間、ピアノのチューニングや全体的な最終確認が行われます。
16時半開場。地元の方々を中心に、遠方は姫路や広島、そして奈良の方々までお見えになりました。今回、開演から終演までコーヒーやほうじ茶、生チョコやチーズのお接待をさせて頂きました。Gikoohはこの日のために深入りのグァテマラというコーヒー豆を選び、粗挽きでドリップ。お菓子のチョコやチーズに合わせて少し濃いめながら、すっきりとした風味で淹れてみました。これが予想以上に喜んで頂き、60杯分のコーヒーがすべてなくなる盛況ぶりでした。因みに生チョコも家内の手作りです。
いっぷくタイムは初の試みでしたが、会場がとても穏やかになったのが印象的でした。

17時開演。何と表現して良いのか、やはり音楽はLiveに限るということが実感です。臨場感、迫力、演奏家の鼓動、息遣い、何もかも圧巻されました。特にジャズという音楽は演奏家の肉体面と精神面がすべて音となって表現されるので、演奏家のレベルが高いとそれだけ凄い音が宙を舞います。先ほど菊池さんのことを書きましたが、菊池さんのピアノを聴きながら「小曽根真さんと同じ音色が出せる人だな」と鳥肌が立ちました。それは手先の器用さだけでは決して奏でることの神秘的な音色。今後一層の活躍を期待したいピアニストの1人です。

背景には林鶴山さんの竹林の図が描かれた六曲一双の屏風を使わせて頂きました。まるで客殿が竹林と化し、お寺に相応しい幻想空間となりました。前半50分、休憩、後半50分、アンコール2回の熱演となりましたが、今回は有名な枯葉やモーニンといったスタンダードナンバーが含まれていたことも加わって、大いに盛り上がりました。中村健吾さん、川嶋哲郎さん、海野俊輔さん、菊池太光さん、ご来山頂きましたお客様、本当に有難うございました。

Liveが終わり、庫裡にて打ち上げ。この日は、平素お世話になっているお茶の先生や檀家さんが手作りの料理を多数ご用意下さり、華やかな食卓となりました。祭り寿司、炊き込みご飯、きんぴらごぼう、里芋の旨煮、焼きアナゴ、豆腐サラダ等々、心の籠った手作り料理にメンバーの方々も非常に喜ばれていました。勝福寺Liveが10年以上も続いているのは、こうして料理を作って下さる人、駐車場など外回りのお手伝いをして下さる人、受付や裏方をサポートして下さる人等々、陰で支えて下さる大勢の方たちのお力あってこそのものです。本当に有難いです。

Liveの開催を記念して、檀家さんが活けて下さいました。いつも有難うございます。


10月29日(月)

さて、場面は一転し、翌朝は総社市立西小学校へ。そう、健吾さん達や小学校にお願いしてミニライヴを行って頂いたのです。関係者の皆様、本当に貴重なお時間を頂きまして深く感謝しています。子供達がプロフェッショナルな演奏家のJAZZに触れて、何かしらの力に繋がれば嬉しい限りです。今の時期に感情を豊かにしておくことが、将来きっと役に立つ日が来ることを願っています。

正門前にて。メンバーの方より写真をご提供頂きました。

普段、演奏会は舞台の上だと思われますが、校長先生のお心配りでご覧のようにして頂きました。ピアノは大変に重たいので、諸先生方も移動の際に大変だったと思われるのですが、このスタイルはGikoohにとっても子供達にとっても有難く、音楽を楽しむには理想のセッティングだと思いました。演奏家との距離が近いほど親近感が湧き、わくわくするものですから。健吾さん達もこのスタイルを喜んで下さる様子に、凄い人ほど謙虚であるということを改めて実感した瞬間でもありました。

全校児童約180名を前にしての熱い演奏。子供達の前でも正装され、本気で演奏される姿に目頭が熱くなりました。曲目はJAZZのスタンダードナンバーから、アニメソング、更には1人の児童さんと「聖者の行進」を共演されるなど工夫された内容の濃い1時間でした。子供達の反響が予想以上に大きかったことを嬉しく思いました。熱い演奏もさることながら、中村健吾さんが子供達に語りかける言葉は琴線に響くものがあり、Gikoohの予想通りというか、それ以上の実り多き素晴らしいLiveとなりました。

とても充実した2日間でした。またいつか、やりましょう!