Gikoohの見聞記
2021/03/28up
令和3年3月27日 勝福寺「正庵」にて利休忌を勤修
絹本刺繍(不審庵所蔵 利休居士像を参照して謹製。讃なし)
勝福寺所蔵
皆さまこんにちは。今回は当寺で開催しました茶道文化の大成者、千利休さまの遺跡を偲ぶ「利休忌」をupしたいと思います。
本来の祥月命日は2月28日ですが、新暦では3月か4月に相当し、当寺は表千家に所属していることから、家元の慣習に従って新暦の3月27日に「利休忌」を開催させて頂きました。
ちょうどこの日、当寺の子ども茶道教室(小学生)と稽古日を同じくしていたこともあり、子ども達にもその厳粛な空気感に触れてもらうことが出来ました。
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見頃を迎えたヨメイヨシノ。
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まず茶室「正庵」のご紹介をしましょう。この茶室は建坪3坪です。当初の計画から約10年の歳月を経て、令和元年に竣工しました。設計は倉敷建築工房「大角雄三設計室」の大角雄三さんに依頼しました。全国的に著名な設計士さんで、当寺にはもったいないなようなご縁を頂き、有難かったです。
モチーフにしたのは京都・大山崎にある妙喜庵「待庵」を参考にさせて頂きました。全国を見回すと待庵の写しは珍しくはありませんが、私には畏れ多くてそのままは写さず、また費用的なハードルもどうにもならないので、身丈にあった「待庵風」の仕立てとして、工夫を凝らしました。その気持ちを汲み、有形にして頂いたのが、大角雄三さんです。
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蹲周辺
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躙り口を躙り、それでは内部をご案内しましょう…
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内部の広さは二畳。極少空間です。角炉に四尺の室床、掛込天井と棹縁天井の組み合わせ等の工夫が随所に鏤められており、眼の錯覚現象から不思議と狭さを感じることはありません。もともとこの空間を設計した利休さまの美的感覚は凄いと思うのです。この日は利休さまを偲ぶ日ですから、家元の祀り用に習い道具を設えました。お道具の配置等に相違点があるかも知れませんが、寛容に解釈ください。
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この利休さまは茶室の大きさに合わせて製作しました。巾8寸、丈1,76尺と、実物はかなりコンパクトです。しかし、完成度は非常に高く、唯一無二の利休像に仕立てられました。利休さまの製作に関しては、Gikoohの熱い思いがありました。茶の湯の世界に精通した利休さまの勝れた美意識、人柄、当時の時代事情、太閤秀吉さまとの人間関係等々、様々な光景を可能な限り想像して、それらすべてを抱擁したような慈愛溢れる利休さま、詫び寂びを感じさせる利休さまの御尊像を、しかも刺繍で表現させたいと考えたのです。
その構想から何年過ぎたでしょうか…。遂にその道を開いてくれる老舗と縁を結び、打ち合わせを重ねて約10か月を要して完成しました。Gikoohは作品を見ると、職人さんの技術、人柄、更には気質まで察する特異な体質があります。この利休さまが完成して一見した時は、息を呑むほどに感銘を受けました。職人さんはGikoohの想いを察して具現化させるべく、相当ご苦労があったと聞き及んでおりますが、お蔭さまで心のこもった素晴らしいた利休さまが誕生したのです。
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午前7時。子ども茶道は午後からでしたから、早朝にお茶湯をして利休忌を勤修しました。Gikoohは茶道のお稽古を通して遇い難き精神文化を学び、、遇い難き多くの人との出会いを頂きました。それ故に利休さまには格別の尊崇の念があり、特別な思いで1日を過ごしました。
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午後からは子ども茶道教室です。その様子を少しだけupしましょう。子ども達は年齢的にまだ幼く、千利休さまって誰?利休忌って何?という感覚かも知れません。しかし、潜在意識には残りますから、大人に成長した時に、情感豊かな立派な人として実を結ぶ日が来ることを願っています。
ちょっとここで、この場面を想像してみて下さい。この時に、利休さまの精神性が見る人の心へしっかり伝わらなければならいのです。このことは、実生活のすべての場面において応用できる考えではないでしょうか。
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利休さまも、きっと子ども達ちの健やかな成長を願っておられることでしょう。
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さぁ、利休さまを拝した後は常の会場に場を移し、お稽古をしました。今日は特別な日でしたから、御饅頭も上用饅頭にしました。食籠(菓子器)は、Gikoohの心の師で故人の林鶴山さんの作品「欅拭漆八角食籠」です。
貴重な1日になりました。